当クリニックでは心療内科の診療は行っておりません。またうつ病などで治療中の方はかかりつけ医師とご相談の上、参考にしてください。
自立神経は私たちの意思とは関係なく呼吸、心拍数、体温、体の代謝、内臓の動きなどを適度に調整してくれます。自律神経には二つの種類があり、人が起床して活発になる時の交感神経と仕事や学校から帰宅してホット一息ついたとき、夜、床に就いたときなどリラックスしているときに優位な副交感神経があります。「さあ頑張るぞ」という時に交感神経優位になります。
もともとストレスは普段の定常状態を変える刺激やひずみです。身近のところでは飲み会で遅くなって奥様に叱られたとき、高いゴルフクラブを内緒で買って価格がばれたとき、会社のプレゼンの原稿が間に合わないとき、満員電車、コロナ、人間関係など、私たちは多くのストレスに囲まれています。
ストレスを感じたら腎臓の上にある副腎からコルチゾール(副腎皮質ステロイドホルモン)がいっせいに脳の中にある恐怖や不安を感じる扁桃体に向かいます。そして扁桃体からストレスがきた緊急指令を全身の隅々の動脈にまとわりついた自律神経(交感神経)までシグナルを送り血管収縮を起こし、心拍数を上げて心拍出量をあげます。同時に血液の凝固能力を高めます(血液が固まりやすくなります)。消化器では胃酸の分泌が促進されます。ストレスが長引くと胃の粘膜が乱れて神経性胃炎や時にはストレス性胃潰瘍などのトラブルに見舞われます。
また、いろいろなストレスが重なる(仕事のスケジュールが目いっぱいの時のダブルブッキングなど)とストレスホルモンが蓄積されてストレス反応の暴走が起こり、心筋梗塞や脳梗塞、脳出血などの深刻な疾病に発展することに繋がります。また長期間のストレスで血糖値が高い状態が継続すると糖尿病を発症する大きな原因になります。
しかしながら皮肉なことに、このような仕組みは人類が今日まで生き延びられ人類という種を守るメカニズムなのです。古代には私たちは狩りに行き獲物を捕まえに行きました。狩猟に向かう時には身体能力を最大限に引き出すために交感神経は緊張して心拍数を上げて準備します。
しかし狩猟はいつも成功するわけではなく、獣に襲われて傷を受けることも珍しくはありません。そんな時、出血を最小限にするため動脈が収縮します。また血液も血小板や凝固因子が活性化され、血液を塊りやすくして出血を最小限にして命を守ります。
人間にとって重要な臓器の脳の主たる栄養源はグルコースです。ストレスホルモンは血糖値を急激に上昇して脳を守ります。こうして人類は今日の繁栄に至ってます。
現在は数万年に前と比べると獣に襲われて外傷を被ることは珍しく、24時間取り囲まれている生活上の持続的な現代版ストレスがストレスの中心です。ただしストレスの質の大きな違いは我々の祖先の場合はストレスを感じるのは主に狩猟の時だけですが現代人は24時間、常に社会的な様々ストレスに持続的に晒されてます。
仕事や授業はしっかり受けるが、そのあと体調の悪い時は友人・上司からその夜のお誘いはきっぱり不参加と言いましょう。
楽しいことは心行くまで楽しむことです。親しい友人と出かけたり、映画に行ったりして学校のことや仕事のことはすっかり忘れましょう。
多種多様な現代の取り生活者は交感神経が高まりやすい状態にあると考えます。普段から自律神経を整えておくことは大切です。ストレス対応メカニズムが海外からいくつか報告されています。
再度交感神経のレベルを調べると興奮していた交感神経が正常人レベルまで回復していました。つまり運動がストレスの暴走の原因となる交感神経の興奮を抑えることがわかりました。さらにアメリカのウエイン州立大学の研究者は運動していないネズミと運動しているネズミの脳の延髄の神経の変化を調べました。元来、脳幹部にある延髄は扁桃体からのストレスのメッセージを伝える生理機能があることが知られてます。その扁桃体と自律神経をつなぐ伝導路の延髄の神経細胞の突起の数を比較すると運動していないネズミの神経突起より運動しているネズミの神経突起が50%以上優位に減少していることを証明しました。延髄の神経線維が発達していると扁桃体の恐怖や不安のシグナルをそのまま自律神経に伝え、交感神経が興奮してしまいます。しかし延髄の神経線維が少ないとストレスに反応した扁桃体にシグナルを伝えにくくして、交感神経の興奮が抑制されます。運動すると延髄から副腎へ伝える神経メッセージが減り自律神経が安定します。結果として運動することが延髄のストレス伝達を抑制する大きな役割であると、解明されてきています。
全ての生活習慣病の人に必ずしも適応しませんが、具体例を一つ上げます。
少し息が上がる程度のウオーキングを20~30分、汗がじわじわと出てくるぐらいの有酸素運動を週3回程度することなどが、これまでのリサーチ結果を踏まえると有効です(基礎疾患のある人はかかりつけ医の指導を仰いでください)。大げさに考えず身近にも運動機会はあります。通勤で一駅を電車・バスに乗らずに歩くことや駅や職場でエレベーターを使用せず階段を使うことも有効です。できることを少しずつコツコツとすることです。
人間ですから自宅で何かの拍子で落ち込むことがあります。歩くことなどしなくても、まずは身近にできることで体を動かすことです。そんな時は迷わず掃除をすることが一番おすすめです。一心不乱に掃除や整理して身体を動かすプチ運動によりお部屋やトイレがきれいになり、本棚が整理されたりして、さらに自分の心も清められ精神がリセットされます。
我々先祖は時計もなく明るくなると起きて暗くなると眠りにつくという、古代から引き継がれてきた睡眠習慣があります。それが自然で良質な睡眠に欠かせません。 しかし皮肉なことに文明の発達で電気や照明が発明されて世の中が明るくなり、また車などの騒音が真夜中でも聞こえて睡眠環境が随分と変わりました。環境がどう変わっても深い良質な睡眠が重要であることに違いはありません。
睡眠は昼間の仕事や勉強で傷んだ細胞の修復・免疫能の強化・エネルギーの吸収など多岐にわたり非常に重要です。
人それぞれ職種によって違いはありますが、基本は日の変わる0時までに床に就き、起床時はカーテンを開けて、地球上の全生命の根源である日光を浴びる方法で交感神経のスイッチを入れることから始めてください。同時に幸せの神経伝達物質であるセロトニンの分泌が活性化され、また睡眠ホルモンのメラトニンの予約スイッチが入ります。メラトニンの活性は朝に活躍することなく夜間の分泌スケジュールを立てます。その結果セロトニンホルモン分泌後14~16時間後にメラトニンの分泌が最高潮になり自然の眠気を惹起します。
最近は研究が進み腸活はホットな話題ですが、10年以上前から東京医科歯科大学の藤田浩一郎教授がその重要性を訴えられてきました。脳の次に神経シナプスが多いのが腸です。免疫細胞のリンパ球の8割は腸に存在します。
ところで大事なプレゼンの直前や学校の試験の前に急にお腹が痛くなったりする経験をされた方も少なくないと思います。脳が感じたストレスで扁桃体が刺激され、副交感神経を弱めて腸の働きが悪くなるからです。だから平素から腸内細菌叢(腸内フローラ)を整えることを普段の食生活に取り入れることが大切です。発酵した食材をとり入れるなど、食事に関する腸活は多くの書物がありますので参考にしてください。
幸せホルモンのセロトニンの8割が腸で産生されます。セロトニンは自律神経を整える重要な神経伝達物質で心のバランスを整えます。
歯が痛かったり、歯周病があるとしっかり咀嚼できません。ゆっくり、しっかり噛まないと十分な唾液が出ません。十分な唾液で消化して食道・胃に食べ物を送り込まないとしっかり消化ができず胃や食道の負担だけでなく、正しい腸内細菌叢歯(腸内フローラ)を作ることができません。歯磨きなどをおろそかにしたり、お菓子やスナック食べたまま寝てしまったりすると猛烈に口腔内に細菌が増殖します。万一、その細菌が血流に乗って血管内の動脈硬化に蓄積された時は増殖し重要な血管に致命的なダメージを与えます。そして心筋梗塞・脳梗塞・脳出血・心内膜炎など深刻な病気に進行することも稀ではありません。
しかしこれはほぼ確実に予防できます。食後などにしっかり歯を磨くことです。また中高年になると歯槽膿漏にならないことです。そのためには定期的に歯科受診して診察を受けることが大切です。