食べた食事は胃や十二指腸で消化され、小腸で栄養が吸収され下記の解剖図の通り青色で描かれた門脈を通じてその栄養が肝臓に吸収されていくのが良くわかります。その後も免疫メッセージは血流に乗り脳をはじめ呼吸器など体中に伝えられます。
山上院長の大腸カメラの写真を示します、ツルっと光る表面はムチンと呼ばれる透明の粘液で覆われています。さらに表面を拡大すると絨毛が絨毯のように敷き詰められて中には栄養を吸収する網の目のような毛細血管が多数あります。栄養は上記の通り門脈を通じて肝臓をはじめ全身に運ばれてゆきます。腸の主だった役割を列挙します。
腸内細菌の働き
上記の腸の働きを考えると腸が体と心の健康に大変重要だと認識できます。一般的に発酵食品が腸内細菌叢にとっていいということは広く知られるようになりました。しかしながらヨーグルトのほとんど(90%)は胃酸で分解されてしまします。ただ生き残ったヨーグルトや残骸は腸に到達して善玉菌の餌になります。最近では胃酸に強いヨーグルトも店頭で見かけるようになりました。さらに重要なことは腸内環境が良いだけでなく、腸の動きである蠕動運動(自律神経の副交感神経優位の時腸の動きが良くなります。⇒当ホームページの自律神経をご参考になさってください。)
がしっかり腸粘膜に潤沢にムチンが分泌され、便秘をしないで毎日排便があること大きなポイントです。
さて、腸内細菌に戻るとどの腸内細菌も野菜や植物に含まれる水溶性食物繊維を餌に短鎖脂肪酸を作り出します。短鎖脂肪酸は腸内を弱酸性に保ち良い腸内環境を保ちます(悪玉菌は酸性を嫌います)。腸内細菌は毎日刻々と変わります。近年の日本人の食生活は欧米の影響で動物性蛋白や脂質、ファストフードの加工肉を食べる機会が増えました。決して全てが悪者ではありませんが、どちらかというと悪玉菌を増やす傾向にあります。野菜を多くとることを意識することが健康の決定打です。
こうして考えると 結果的に発酵食品をたべることと野菜や果物からとれる胃酸に溶けない水溶性食物繊維がとても重要です。短鎖脂肪酸は大腸粘膜のエネルギー源になることムチンを増加させることで蠕動運動が活発になります。
善玉菌が短鎖脂肪酸の多い腸内細菌の環境下では 幸せホルモンのセロトニンが作られます。80%程度のセロトニンは腸で作られます。また短鎖脂肪酸はGLP―1という物質の分泌を促してインスリンの分泌を促進して食べた糖分の吸収を促し、胃酸の分泌を抑えて過食を防ぎます。
ウエルシュ菌・ボツリヌス菌などが悪玉菌の代表で、下痢や食あたりを引き起こします。硫化水素やインドールという臭い腐敗ガスを発生させる悪玉菌がいます。彼らのエサはソーセージやベーコンなどの加工食品のタンパク質をエサに悪い毒素を産生して、生活習慣病の原因となります。
リンパ球を中心とした免疫細胞(約2兆個)の70%は主にほとんどが大腸そして一部小腸にいます。小腸の下部の回腸にはパイエルという組織があり。免疫細胞の修飾を行い、血流を通じてIgA抗体などの様々な免疫物質を腸内に放出したり、血流を通じてそれらを全身に送り体を有害な細菌、ウイルスから守り、花粉症などアレルギーを惹起する物質を攻撃します。十人十色という言葉のように各人の腸内細菌叢には違いがあります。腸内細菌叢の日和見菌のひとつのバクテロイデスは脂肪を減らす働きがあります。免疫は元来体を外敵から守ることが多種の腸内細菌が存在します。 その中でクロストリジウム菌の重要性が最近のトピックスで世界の学者の注意を集めています。クロストリジウム菌はおよそ100種類の菌が存在していくつかの病気の原因菌にもなります。話は、体の免疫に戻りますが、通常免疫細胞は自己に対する有害な細胞を攻撃しますが、いわゆる自己免疫疾患において、何かの契機に自己の細胞を攻撃するような免疫細胞が暴走することがあります。その暴走する免疫を制御する重要な菌が大阪大学の坂口先生が発見した制御性T細胞(Tレグ)です。クロストリジウム菌から生まれるTレグは免疫応答を抑制する機能があり、炎症性疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患など過剰な免疫反応を程よく抑制することが明らかになってきています。
元来、古来から日本人は多くの野菜や米など食物繊維の豊富な食事を摂取してきましたが、直近半世紀に日本人の食生活が猛烈な勢いで西洋化して腸内細菌叢の分布が変化して来ました。その中でクロストリジウム菌の変化も見逃せません。早稲田大学の服部先生の論文でもクロストリジウム菌を中心に免疫力をコントロールする物質を多く出すことが発表されています。
一般的に禅修行僧などの食べる精進料理など日本古来の食生活をすることで腸内細菌叢にクロストリジウム菌が多いそうです。人体は自分の臓器以外に腸内細菌叢を健康に役立てるシステムを持っていることになります。だから腸は健康と心の運命共同体なのです。