気象病の大きな原因のひとつが自律神経の乱れです。自立神経の役割は極めて重要です。私たちは血圧をさあ上げよう!と意図的に上げることはできません。なぜなら自分の意図とは違って、自動的に生命維持に不可欠な血圧・呼吸・消化吸収などを無意識のうちに自律神経が行っているからです。
交感神経は心身の活動を促進する働きがあります。仕事のストレス・通勤のストレス・家庭内・親戚でのもめ事などの結果、交感神経優位となります。その一方で素敵なカフェで美味しいケーキを食べて幸せな気分になったり、自宅に帰りお風呂でのんびり音楽聞いている時などはリラックスして副交感神経優位になります。
人体の生理学的な変化を図で説明しておきます。心身ともに健康であるためには自律神経が安定することが重要です。自律神経の乱れを犯すのは各種ストレスです。ストレスの多い生活を送ると交感神経の働きが過剰になります。ストレスを少なくするヒントは別のコーナーにまとめます。
内耳は聴覚を感じる蝸牛と平衡感覚をつかさどる三半規管と前庭で構成されて、その中はリンパ液で満たされています。気圧をキャッチするのは内耳です。気圧の変化は鼓膜→耳小骨→耳石器・三半規管に伝わります。三半規管が気圧の変化を感じると前庭神経や蝸牛神経を介して脳に伝えられます。三半規管の機能や解剖を簡単に解説します。文字どおり半円のチューブで図のように三半規管X軸、Y軸、Z軸の3本で体が回転したり、体に加速度がかかったりしたときで3次元の体位を人体がわかるシステムです。3半規管のチューブ中にはリンパ液が満たされていて、その中に小さなカルシウム粒が神経細胞の上に乗っています。ストレスや疲労で自律神経が変調をきたすとその変化がリンパ液に伝えてカルシウムの石が不安定になり3半規管と蝸牛を内側から圧迫してめまいなどの症状が出ます。脳はシグナルを受け取りストレスと感じ交感神経が優位になり気圧変化の症状が発現します。つまり気圧の変化によりリンパ流がスムーズに流れなくなり、今の自分の地球に対する3次元的位置情報が狂ってしまい、めまいや吐き気につながります。もちろん体の位置情報は目からの情報が小脳でも感知しますがそれ以上に内耳の影響が強く出ているのです。
自分で直接感じることのない気圧とは大気圏の中の空気の重さです。分かりやすくいうと今の大気圧では体が慣れて毎日生活しています。生物はもちろん真空の中では生きていくことは不可能です。
分かりやすい例でいうと凄い水の圧力で生活している深海魚を釣り上げると眼球が飛び出しますよね。アーノルド・シュワルツェネッガー主演のトータルリコールという映画のシーンで宇宙の基地の空気が漏れて彼の眼球が飛び出すシーンをご存じでしょうか。さて地球に話を戻すと仮に大気圧が1気圧(1013.25ヘクトパスカル)のとき、文献では体表面積1平方メートルで体にかかる空気の圧力はなんと10トンと言われています。一般的に男女平均して約15トンの圧力を受けています。低気圧でも999ヘクトパスカルぐらい下がるときありますね、強い台風だと960ヘクトパスカルという、過激な気圧変化が生じます。
気温や湿度を感じるセンサーは主に皮膚にありますが、内臓にもあります。鍋焼きうどんやアヒージョなんか慌てて食べると食道や胃に熱さをかんじますね。
梅雨や日本の夏のように湿度が高いと皮膚から発汗できず、温度・湿度センサーが皮膚湿度の異常が脳に伝わり自律神経が乱れ体調を崩します。
先ほど述べたように湿度が高くなると汗が適度に発汗せず体液が体内に貯留して自律神経を乱します。また一日の寒暖差が大きいと体がそれに対応するために交感神経優位になり大きなエネルギーが消費され倦怠感や気分の落ち込み、頭痛などを感じることがあります。
気象病の予防は自律神経を整えることがスタートラインです。
一般論としていかなる年令や生活環境、仕事環境、生活習慣にもかかわらず、この世で生きていくためにはストレス負荷は避けて通れません。気候変動も例外ではありません、どんな状況でも自律神経をちょうどよく安定されることが欠かせません。それにはやはり心身の準備が必要です。
毎日同じ時間に起き同じ時間に眠ることです。言うは簡単ですが実行は難しいですよね。できるだけ努力してください。つまり朝起きたらカーテン開けて日光浴びる。脳がアサー!と感じ、ドーパミン(幸せホルモン)の分泌が促進されます。堅苦しく考えず、たまの日曜日にゆっくり寝ることもOKと私は考えます。
基本的には副交感神経が優位になり体温が下がり眠りを誘います。交感神経優位だといい眠りにはつけません。私は大のサッカーファンで、長谷部選手は前回(南アフリカ大会―ロシア大会)までFIFAワールドカップの主将を3回務めた名選手ですが、試合のあった日は興奮して朝まで全く眠れないとインタビューで答えてます。やはり交感神経優位が極度に緊張し副交感神経のでる幕はなかったと思います。良眠のhow toはかなりの書籍が出版されていますので参考にしてみてください。また寝る前に刺激的な映画を見たり、スマホやタブレットを見ることは交感神経を高めて安眠が得られなくなりますので、やめておきましょう。
テニス・バスケ・スカッシュなどの運動負荷の大きく対人で勝負のつくゲームではなく、ウオーキングやサイクリング、軽いジョギングなどマイペースででき、心臓や神経に軽く負荷をかける有酸素運動をしてください。運動している人は自然とマイルドに自立神経が鍛えられて全く運動していない人よりストレスを上手に対応できると言われています。結論として自律神経を鍛えることは大切です(自律神経の鍛え方も多くの書籍が発刊されていますので参考にしてください)。
いの一番は平素から自律神経を鍛えることです。しかしながら、とっても内耳の循環が不安定でどうしても内服が必要な場合は内服が生活のQOLを上げます。
ビタヒスチンメシル酸(メリスロン)
効能:内耳循環障害改善作用・脳内血流改善作用などの薬効です。
ジフェニドール塩酸塩(セファドール)
効能:前庭神経循環調整作用・椎骨動脈循環改善作用・眼振抑制などの薬効です。
東洋医学の人の健康は3つの要素がバランス取れていることです(理気)。理気作用のある漢方で気を整えると血流が改善され、肥満や高脂血症の治癒に働きます。
【気】無形の生命のエネルギー
【血】文字通り血液
【水】血液以外の体液
上記三つがバランスよく体内をめぐることが東洋医学における治療の目標です。
ストレスできが停滞すると、血液の流れが妨げられ、血圧上昇、体内の栄養バランスの滞留につながります。
利尿を目的として作られた漢方。その構成生薬は次のものです。タクシャはサジオモダカ科という水草の一種で池や沼などの湿地で採取されます。水分代謝促進の効能があり浮腫を取り三半規管に働きめまい、耳鳴り、頭痛に効果があります。ソウジュツはホソバオケラという多年生草本から抽出します。その昔江戸時代に中国から佐渡島に渡来して佐渡島で多く栽培されました。匂いがきついのが特徴。効能は健胃消化薬、利尿、めまい、鎮痛、滋養強壮が主たるものです。 ブクリョウはサルノコシカケ科マツボドの菌核の輪切りにして乾燥したもので多糖類を多く含む。効能はめまいや動悸を治します。チョレイはサルノコシカケ科のチョレイマイタケの菌核を乾燥したものです。浮腫、排尿障害、下痢に効果あります。以上の生薬は水の分布調整の生薬です。もう一つケイヒは歴史が古く古代バビロニアや古代エジプトの古文書に記載されています。気を巡らせ発汗させる、理気作用があります。
血行を良くして体を温める作用がある。しもやけ、冷え性 頭痛に効果ある。構成生薬から考察する。温めるのはゴシュ。中国原産で享保年間に伝来し薬木として全国で栽培される。ゴシュの果実は体を温める効果や健胃効果、頭痛に効きます。サイシンはもともと日本で取れます。根や根茎に薬効成分あり鎮痛や手足の冷えに使います。トウキは一般的にはご婦人の冷え性・貧血に用いられます。 さてトウキはセリ科の植物でその根を湯通しして乾燥させて生薬にします。産地は奈良や北海道です。東洋医学的には補血・活血・調径・潤腸の効能があります。補血作用とは体力の衰えや皮膚の乾燥に効果があります。血虚とは体を栄養する血が不足している状態のことです。血虚の症状は疲労感、めまい、立ち眩み、女性の生理不順などです。
セロトニン分泌を促進する作用があります。セロトニンは必須アミノ酸のトリプトファンから生合成される脳内神経物質です。自律神経を安定させイライラや気分の高ぶり抑えてリラックス効果があります。文献による抑肝散の作用機序からは動物実験で神経を興奮させるグルタミン酸放出抑制作用が報告されています。東洋医学では肝は西洋医学で言う肝臓ではなく、精神のことを表します。抑肝散の構成生薬のサイコは神経を安定させる効果があり、小児の夜泣きやひきつけに適応があります。成人には自律神経の失調やストレス緩和にもちいます。また構成生薬の代表的な生薬はチョウトウコウ(アカネ科のカギカズラの茎や棘を湯通しして乾燥させたもの)で精神を落ち着かせる効果があります。
これらのことから不安感や不眠のある人に効果があります。
めまい、ふらつき 動悸のある人に効果があります。まさに自立神経を整える作用です。構成生薬ソウジュツはキク科のホサバオケラの根茎で利尿作用があり体内の水分分布調整をします。次にブクリョウはアカマツやクロマツの伐採後、数年経て切り株の土中に付着形成して、その菌核をそのまま乾燥した物質で中国・韓国由来で、日本には江戸時代に入ってきました。薩摩藩のブクリョウが最も上級で大和、出雲でも栽培されました。効能ですがやはり体液の分布調整や胃腸の働きを助け、精神の安定を図ります。日本の超有名な疲労回復のドリンクにも含まれています。次にケイヒです。中国原産常緑の高木です。で遣唐使によって7世紀ごろ日本にもたらされました。薬用には幹の太い部分から採取された樹液を使用します。発汗、解熱、鎮静の薬効があります。最後にカンゾウです。マメ科カンゾウ族で根や根茎を乾燥されたものです。主成分がグリチルリチンで甘味が強い生薬です。薬効は解熱鎮痛作用が主です。健胃消化薬の一面もあります。甘さから、現在、漢方だけでなく甘味薬として食品・化粧品・入浴剤にも使用されています。この生薬は独特で他の生薬と混ざりやすく強い甘味から日本では醤油、味噌、漬物にも使用されています。カンゾウは心悸亢進にも一役買ってます。
心窩部から季肋部にかけての痛みや不快感に適応があります。具体的に述べると小柴胡湯と五苓散を合体させた漢方です。五苓散は前述しましたのでここでは割愛します。小柴胡湯の構成生薬は3つのカテゴリーに分けられます。一つ目が熱を冷ますサイコ・オウゴンです。サイコは江戸時代から全国的に栽培されています。ミシマサイコが有名でしたが今はその面影はなく関東以西で栽培されています。物質は根を乾燥したものです。成分はサポニンです。特有の匂いと苦みがあります。薬効は解熱・鎮静解毒です。
発症や経過は多彩です。