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生駒市の内科・循環器内科 カズクリニック

冷え性攻略

冷え性に関しては午後診療のみ行っております。

冷え症ってなんだ?

冷え性を英訳するとpoor circulation(循環不全)とcold tolerance(冷えに対する許容範囲)が出てきます。後者は症状や現象を表します。やはり前者の血流が乏しいということが冷え性のメカニズムの実態を最も表していると思われます。具体的には手足の末端が冷えて仕事や家事が辛い、体が冷えてよく眠れないなどの症状があり生活の質を低下させます。このような抹消の血流低下はおのずと代謝も落とします。
冷え症の原因は体質や加齢はもちろんですが運動不足・ストレスも関係してきます。注目点は人の血管の長さは10万㎞あり地球2週半分に相当します。そもそも四肢の温度を保つために暖かい血液が流れています。大動脈などの太い血管ももちろん大切ですが、10万kmの細かな血管に注目して、そのためには普段の生活習慣から動脈硬化を改善し血管の大半を占める各臓器や筋肉・手足の毛細血管の血流を隅々まで豊かにすることを目標にしましょう。冷えで熱を上手く産生できず、末梢循環障害で体の筋肉や内臓に十分な血液が環流しないとその機能が落ち、様々な病気の原因になります。

冷え性が関連する症状

冬季はもちろんのこと夏期なのに足や背中が冷えたり、腰痛・頭痛・肌荒・不眠などがあるという、多彩な症状があります。とりわけ日本人の70~80%の女性は何らかの冷えを感じている報告があります。加齢とともに男性も冷え性の症状を感じることも例外ではありません。

冷え症になりやすい生活環境と習慣

かつて四季が豊かな時は夏や冬の前に春と夏がはっきりありました。日本の家屋も木造が多く気密性に乏しく自然の移り変わりが家の中の環境と相関してきました。

しかし、高度経済成長以降で家屋は気密性が高くなり冷暖房が効いて過ごしすく、快適になりました。街や電車などの公共交通機関、ショッピングモールなども四季問わず空調が行き届きいつも快適な状態にあります。

高度経済成長前までは自律神経の調整も自然に行われていましたが、最近では地球温暖化による気候の変化で、そうではなくなりました。近年、冷えの訴えが多いのは普段の生活がモダンに西洋化したことにあるのも一因です。さらに冷え症が辛くなる原因に一日の寒暖差が大きいことも自律神経を不安定にして末梢血管の循環に悪影響を与えています。


生活習慣の変化から検討した冷え性

夏の冷え性の原因の一つには男女問わずファッションの変化で肌の露出が多くなり、冷気が体に入り込む機会が多くなりました。


また、氷の入った冷たいスイーツを季節問わずに飲食する機会が増えました。ソフトドリンクだけでなく、冬季の冷えたビール、アイスクリームなどもあります。ところでアイスや冷たい飲み物は確かに美味しいですが、胃の組織温度は約40度、そこにほぼ10度以下の液体が入ると消化管全体を冷やします。冷えの強い時は控えめにするのが賢い選択です。しかし、寒い冬に冷たい食べ物を楽しむことは心を豊かにすることがあり良い面が多くあるので、適度に楽しみましょう。


通勤や通学時に、会社やショッピングモール・駅では階段を避けてエスカレーターやエレベーターを使い、運動不足気味になると筋肉が鍛えられません。できるだけ階段を使いましょう。運動は筋肉を増やし熱の生産が上がり抹消の血流がよくなります。ウオーキングなどの有酸素運動がお勧めです。



夜寝る前までLINEやネットサーフィン、ネットショッピングで遅くまでスマホやパソコンの画面を凝視すると交感神経が活発化して自律神経の乱れに繋がります。交感神経が緊張すると抹消の血流が悪くなります。就寝の1時間前にはスマホやパソコンの画面は見ないほうがベターです。
しかしながら、人生楽しんでなんぼのものです、休日前などには多少は羽目を外して人生楽しむことも大切です。


冷えの対策

①食事

われわれ人間は食物から得た様々な栄養素を消化・吸収して、エネルギーの多くを体温の維持に消費します。だから登山で予備の食料を携帯する重要性はお判りになると思います(エベレストの山頂でも南極でも体温は維持されています)。せっかく食べたものからMAXのエネルギーを得るためにはよく噛むことです。噛めば唾液の分泌が多くなり消化酵素がふんだんに分泌され、より多くの栄養素を吸収して、さらに胃腸での吸収もアップします。また咬筋が活躍し頭の筋肉の血流が上がります。ここで重要なのは腹八分目。過食すると大切な血流が胃腸に集中して、体や筋肉に血流が回らず冷えを助長します。

②運動

我々の体の熱の40%は運動による筋肉の動きから得ていると言われています。ウオーキングや階段の昇降などの有酸素運動が重要です。さらに運動することで四肢の筋肉から約40%熱を生み出して血流で体中に熱を送っています。この熱が血流の低下でやってこないと自ずと組織の体温が低下します。人間の血管は10万㎞あり地球を2週半するほどの長さです。その多くが毛細血管であり組織の隅々まで熱・酸素・栄養を運搬します。自律神経のところで書きましたが血管に自律神経がまとわりついていて交感神経優位になると血管が締めあがります。おのずと内臓や体幹・四肢の末梢循環が悪くます。

③腸内環境

偏食や過食によって腸内環境が乱れるとセロトニンの分泌が低下します。セロトニンは心を幸せにする神経伝達物質で90%以上が腸で作られます。セロトニンの分泌が減ると自律神経が乱れて交感神経優位になり、不眠症や精神不安の引き金になります。血管も収縮して血流が体の隅々まで回らなくなり冷え性を助長します。最近、腸活というワードをよく聞きます。腸は脳に次いで神経節が多く体を守る免疫の中心です。腸内環境を正しく保つためには一般に発酵食品(納豆、ヨーグルト、キムチなど)がいい食材と言われています。腸活に関しては沢山の本が発刊されていますので参考にして下さい。

冷え性は冷えと心のモザイク

冷え性は心のストレス(心の冷え)と体の冷えからリンクします。また東洋医学でいう、人のエネルギーの気のめぐりが悪くなります。ストレスを抱えたり、悩み事がある(心の冷え)と自律神経の交感神経が優位になり、抹消血管が収縮して血圧が上がったり、手足に十分な血液が行き届かなくなり冷えを感じます。このように心と体の冷えはモザイクのように絡み合っています。複雑な現代社会は色々なストレス、予想してなかった出来事や思いどおりにならないことが沢山あります。ここで悩まず、肩や心の力を抜いてポジティブシンキングで工夫して冷え性も乗り切りましょう。(このホームページの自律神経、コーピングとマインドフルネスを参考にしてください。)

冷え性なしの快適生活にはばたくには!

お薬なしが理想ですが、飛行機が滑走路を走る時のように、飛び立つまではお薬の補助も利用して無事にテイクオフすると水平飛行に安定します。そして生活習慣改善や心の安らぎ薬が不要になることが目標です。また突然症状が出たときには臨機応変にお薬を服用すればいいと思います。

お薬(西洋薬)

末梢循環障害改善のお薬西洋薬では「トコフェロールニコチン酸エステルのカプセル」があります。

漢方薬と対策

①とにかく全身が冷えるタイプ

症状

新陳代謝が低下して体の熱生産が十分でない。四肢のみならず内臓も含み体全体が冷えて、倦怠感や疲労感が強くなります。

対策

代謝が落ちることを改善するにはやはり有酸素運動。ストレッチやウオーキングからスタート。手足のストレッチはストレッチすると血管が伸びて血管拡張作用のあるNO(一酸化窒素)が放出します。ストレッチに関しては多くの書物が発行されていますので参考にしてください。またNHKの番組のトリセツに冷え性の有用な情報が発信されています。インターネットやスマホでアクセスをしてみてください。

適応漢方

体を温める生薬が含まれる漢方が好ましいです。これらがリッチな漢方薬は補中益気湯・八味地黄丸・六君子湯があります。

代表的な体や内臓を温める生薬

ショウキョウ 生姜の根茎の皮をむき、蒸してから乾燥したものです。
附子 キリンポウゲ科やトリカブト根茎を主とする生薬です。
トリカブトは毒性を取り除くため高圧蒸気処理が施されている代表的な温熱生薬で四肢のエネルギーの不足を補います。
山椒 腹部を温めて体全体を温めます。

②手や足が中心に冷えるタイプ

症状

ひどい時にはしもやけになったり、肌荒れ、血流不足で立ち眩みを起こしたりします。

漢方

このような症状には血を補って体を温める生薬 当帰が含まれた漢方薬が役立ちます。

当帰芍薬散 当帰は基本的に補血薬です。せり科当帰の根です。精油やステロール類を含みます。養血調整作用があり、慢性的な血液不足のことを血虚とよびますが当帰の入った漢方は血虚や養血で血流を促進します。芍薬はボタン科の多年草。初夏ボタンに似た白い花を咲かせます。女性ホルモンを整えさらに血流をよくして肌を艶やかにする作用、炎症、鎮痛に効果あります。さらに更年期障害の漢方でもあります。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯 四逆とは四肢の冷え状態を表しています。含まれる生薬ですが、呉茱萸湯は体の内臓を温め気や血を温めて冷えを取り除く効果があります。モクツウは体の水分や体液を調節し不要な水分を排泄する役割があります。四肢を温める目的では最強と思います。ゴシュトウは体の中心である腹部を温め手や足の冷えを取り除きます。

③頭や上半身が火照るが下半身が冷えるタイプ

症状

頭はぽかぽかしたり、顔が火照っているが足が冷えている人(いわゆるホットフラッシュ)

対策

足湯、下半身浴 さらにウオーキングや軽いスクワットで下半身の筋肉を鍛えて抹消血流を増加させる。

漢方
桂枝茯苓丸 主な生薬のケイヒはケイの樹皮などを取り除いて乾燥したもので体を温め血流改善し同時にのぼせを改善します。ブクリョウは体の水分分布調製をします。総合的にお血状態、言い換えれば血液として生理的な働きをせず滞った血液や全身の血液の滞りを改善する漢方です。

④精神不安・肩こりがあり疲れやすい冷えのあるタイプ

対策

映画鑑賞、音楽、ホットヨガ、深呼吸、マッサージ、アロマテラピーなどのリラックスなどの自分へのご褒美

漢方
加味逍遥散 生薬のサイコやハッカは精神安定作用が優れてます。精神を安らかにするサンシン、局所のうっ血を正し古い血を流してお血の状態を改善する。その他多くの更年期障害に効果のある生薬が配合されています。