大切な受験、進学、就職の新生活への旅立ちのこの時期に生き地獄のような花粉症が我々を襲う。壊れた水道管のようにあふれ出る鼻水、ハクション大魔王、視界0にする眼のかゆみと涙、頭のコンピューターのプロセッサーをシャットダウンさせる鼻つまり、総合的に皆さんの生活の質を下げ、仕事効率や学業に打撃を与えます。
スギやヒノキなどの植物の花粉や、家のホコリの成分のダニなどのハウスダストが原因となって、鼻の中の粘膜でアレルギー反応がおこり次の症状が花粉症の3大症状です。
予防
学ぶ学校や働く会社のロケーションの理解も重要です。
- 川の近くに学校や会社がある場合、川の上流の山には杉が多く植林されています。
日の出とともに開花して花粉が発生して川沿いに下流に向かいます。生駒市も山の近くにあります。
- 漢方のコーナーでも述べますが免疫の司令塔のリンパ球の80~90%は腸に存在しますからおなかを冷やさないこと。つまりは冷たい飲み物や生野菜を控えめにするのが良いでしょう。
- 脱水に注意。口腔粘膜や鼻粘膜が乾燥すると粘膜が傷つき花粉の侵入を促進します。PC・スマホでずっと見ていると瞬きが減り、粘膜感想や眼精疲労を起こします。
症状
2鼻水がでる
花粉を洗い流そうする防衛反応です。風邪で感染したときの色のついた粘り気のある鼻水と違い、透明でサラサラしてます。
奈良・大阪の花粉(冬・春編)
花粉症の症状のメカニズム
スギやハウスダストなどのアレルゲンが鼻の粘膜のヒスタミン受容体や血小板活性化因子(PAF)に結合するとくしゃみ、鼻水、鼻づまりの症状が発現します。言い換えると花粉が粘膜に接触するとリンパ球の一部が活性化されIgEが産生されマスト細胞のヒスタミン受容体とPAF受容体が刺激されます。
花粉症 早期治療(花粉飛散前の早めの内服)の効果のメカニズム
上記のようにアレルギー性鼻炎はマスト細胞からの脱顆粒がきっかけにヒスタミンが鼻粘膜などにあるヒスタミンレセプターに結合することによって発症します。
花粉が飛散しない時期にも活性型ヒスタミンレセプターが存在します。花粉飛散前に、早くから抗ヒスタミン薬(インバースアゴニスト作用✙)を内服するとヒスタミンレセプターと結合して活性型ヒスタミンを不活性型にすることや粘膜の活性型ヒスタミン受容体の発現を抑制します。このような機序で症状を緩和します。
花粉症の治療薬
① 抗ヒスタミン薬
この治療薬の代表は抗ヒスタミン薬でヒスタミンがヒスタミン受容体にくっつくのを制御します。またヒスタミン受容体拮抗薬の点眼薬はレボカバスチン酸点眼薬など。
下記の内服薬は眠気がさして服用した場合自動車運転ができません。
- オロパタジン塩酸塩
- レボセチリジン塩酸塩
- エピナスチン塩酸塩
- ルパタジンフマル酸塩
下記の内服薬は眠くならない抗ヒスタミン薬です。
例えば、ビラスチンはBritish Journal of Clinical Pharmacology 2014:78(5)970-80の論文でビラスチンが大脳皮質のヒスタミンH1受容体への占拠が認められないことが発表されています。
これらのことからロラタジン、フェキソナジン塩酸塩、ビラスチンは国土交通省が航空機のパイロットの服用を許可しています。
② 抗ヒスタミン薬+抗PAF(血小板活性化因子)薬
これまではヒスタミンのみを抑制する内服薬が中心でしたが2014年頃よりヨーロッパや米国で抗ヒスタミン薬と抗PAF薬の合剤が薬としての有効性や安全性が確認され日本でも2017年の3月に保険適応薬となりました。現在ルパタジンフマル酸塩錠が処方可能です。ルパタジンフマル酸塩錠の特徴は抗PAF作用が加わったことで二つの経路から鼻炎の症状をより抑制することはもちろん、鼻炎の遅発相反応のの夜間の鼻閉に有効性が認められています。
③ 漢方薬 小青竜湯
特徴は眠くならない。花粉を受け止める免疫細胞を制御する機能のある半夏が主たる成分の漢方薬です。8種類の生薬が含まれます。半夏は日本各地に存在する雑草。乾姜(カンキョウ)は生姜の根茎を湯に通し蒸した後乾燥したもの。生姜らしい働き、つまり血管を拡張させ組織の血流を良くして体内組織内の水分の停滞を取ります。だから炎症を抑えて鼻粘膜などの呼吸器を温めます。五味子は赤い果実として古典にも記載されています。咳を止めたり滋養強壮の作用があります。その他5種類の生薬でアレルギー性鼻炎だけでなく、アレルギー性結膜炎も含め抗アレルギー作用があります。
④ ステロイド剤
鼻炎の病態は炎症です。炎症によって鼻粘膜が腫れて空気の通るところが狭くなったり多量の鼻汁で鼻閉が生じたりするときは局所のステロイド剤も選択薬のひとつです。
フルチカゾンプロピオン酸エステル点鼻薬、アラミスト点鼻薬など。